買う・借りる
マンションは買うか借りるか。判断を分ける5つの前提
購入価格だけでなく、住む年数、売却時の価格、家賃、保有費、頭金の機会費用を同じ条件で比べる方法を解説します。
この記事の要点
- 買う・借りるの比較は、住む年数と売却時の価格を置かないと結論を出せません。
- 購入側はローン返済だけでなく、購入・売却費用、保有費、頭金を運用しなかった場合の差までそろえて比べます。
- 累計負担と、住み替えやすさ・住戸を変更できる自由度は、別の軸として確認します。
買うか借りるかの結論は、前提によって変わる
同じマンションでも、5年後に転居する人と15年以上住む人では、購入時の諸費用を回収できる期間が違います。さらに、売却時の価格が購入時と同じか、下がるかによって、購入側の累計負担は大きく動きます。
そのため「家賃とローン返済額のどちらが低いか」だけでは比較できません。まず住む期間をそろえ、その期間に発生する現金支出と、期間の終わりに残る資産・ローン残高を同じ表へ置く必要があります。
最初に決めるのは、答えではなく比較条件
「10年間住む」「売却時の価格は購入時の80%・100%・110%で見る」のように、判断が変わり得る前提を先に置きます。
判断を分ける5つの前提
- 1
住む年数
購入では諸費用が初期に発生します。比較期間が短いほど、その負担が1年あたりで大きく見えます。
- 2
売却時の価格と費用
売却代金から仲介手数料などの費用とローン残高を差し引いた手残りが、購入側の負担を左右します。
- 3
住宅ローンと毎月の保有費
返済額に加え、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料を月額へ換算して含めます。
- 4
家賃・共益費・更新料
現在の家賃だけでなく、共益費、初期費用、更新料、家賃が変わるケースをそろえます。
- 5
頭金などの機会費用
購入時に使う現金を手元に残して運用した場合の差を、購入側の追加負担として置きます。
同じ期間・同じ範囲で累計負担を比べる
購入側と賃貸側は、月額ではなく比較期間全体の負担へ換算します。住まいレポートでは、次の項目を足し引きした「累計実質住居費」を比較します。
購入側
頭金・購入諸費用 + 累計返済額 + 累計保有費 + 機会費用 − 売却後の手残り
賃貸側
初期費用 + 累計家賃・共益費 + 更新料
売却時の価格や家賃の変化は1つに固定せず、複数ケースを置きます。結果の幅が重なる場合は、金額だけで一方へ決めず、どの前提を変えると差が開くかを確認します。
購入価格5,000万円、家賃18万円で計算する
購入価格5,000万円、頭金500万円、借入4,500万円、金利年1.50%、返済35年の物件を例にします。購入諸費用400万円、保有費は月3.5万円、売却費用は売却価格の3.5%としました。賃貸側は家賃18万円、共益費1万円、初期費用72万円、2年ごとの更新料を家賃1か月分としています。
| 期間 | 購入側の累計負担 | 賃貸側の累計負担 | 比較状態 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 760万円〜2,210万円 | 1,230万円〜1,270万円 | 中心値が拮抗 |
| 10年 | 1,420万円〜2,870万円 | 2,330万円〜2,530万円 | 前提による差が大きい |
| 15年 | 2,060万円〜3,510万円 | 3,390万円〜3,860万円 | 前提による差が大きい |
購入側は売却時の価格を購入時の80%・100%・110%、賃貸側は家賃変化率を年−1%・0%・+1%として幅を出しています。頭金と購入諸費用を年3%で運用した場合の差も購入側へ含めています。
この例の中心条件で購入側の累計負担が賃貸側以下になる最初の年は、5年目です。ただし、これは上記の入力条件だけに基づく試算です。売却時の価格、金利、家賃のいずれかを変えると分岐年も変わります。
金額と、住み方の柔軟性は分けて考える
累計負担が近い場合は、金額以外の差が判断材料になります。購入には内装や設備を変更しやすい面がある一方、転居時には売却や賃貸化の検討が必要です。賃貸は転居しやすい一方、更新や家賃変更、住戸の改修範囲などの制約があります。
| 確認すること | 購入 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 転居 | 売却・賃貸化の手続きが必要 | 契約条件に沿って退去しやすい |
| 住戸の変更 | 管理規約の範囲で変更しやすい | 貸主の承諾や原状回復条件がある |
| 支出の変化 | 金利や修繕費が変わり得る | 更新時などに家賃が変わり得る |
転勤、子どもの進学、親の介護などで居住期間が変わる可能性がある場合は、予定年数だけでなく、その半分の年数でも計算しておくと判断の耐久性を確認できます。
よくある質問
何年以上住むなら購入が有利になりますか?
一律の年数はありません。購入時と売却時の費用、住宅ローン、保有費、売却時の価格、家賃によって分岐点が変わります。同じ物件でも、比較する前提を変えて複数の年数を確認してください。
売却時の価格が分からない場合はどう比べますか?
1つの金額に決めず、基準となる価格に対して下方・中心・上方の複数ケースを置きます。どのケースで判断が変わるかを見ると、売却時の価格にどれだけ左右されるかを把握できます。
住宅ローン控除は計算に入れますか?
この記事の計算例には入れていません。税制は入居時期、住宅性能、所得などで適用条件が変わるため、対象になる制度を確認したうえで別項目として加減してください。
出典と計算条件
- 国土交通省「住宅市場動向調査」:住宅取得・賃貸住宅入居に関する公的調査の概要を確認(2026年9月22日閲覧)
- 国土交通省「住宅ローンの金利リスクの普及啓発について」:金利タイプと返済期間を検討する際の注意点
- 住まいレポート「計算の手法」:累計実質住居費、比較レンジ、損益分岐の計算条件
記事中の計算例は住まいレポートの計算エンジンから生成しています。税制、金利、保険、修繕、引っ越し費用など、個別条件によって必要になる項目は別途確認してください。